フリーランスライターの営業習慣|目指すのは職人ではなく「丁度良い人」
フリーランスは働き方の多様化や感染症拡大の影響などで増加傾向にあります。内閣官房の試算によると、2020年のフリーランス人口は462万人にのぼるとされています。
しかし、多くのフリーランスは独立した当初既存の顧客がおらず、新たに市場を開拓しなければなりません。そこで必要になるのが営業戦略です。
今回は、フリーのライターとして日々営業を行う私が実践する営業戦略について詳しくご紹介します。
目次
フリーランスの営業は成長のために必要なプロセス
フリーランスとして生活する上で営業は欠かせません。はじめのうちはどうしても短期的な利益ばかりを追い求めがちですが、営業こそ中長期的な視点を持つことが大切です。まずは、営業を通じたあるべき成長のプロセスやスキルを獲得する上での指針について解説します。
仕事→実績→営業のポジティブなサイクル
なぜ営業に中長期的な視点が必要なのでしょうか。その答えは、営業が自身の成長に必要なプロセスだからです。
図のように、中長期的な成長を考えた場合、いかに実績の残る仕事を得られるかが重要なポイントとなります。自分の領域にとって重要な仕事をすることで、仕事は実績として残り、今後の営業に良い影響を与えるようになります。
反対に、短期的な利益を重視するあまりクライアントから評価されにくい仕事ばかりこなしていると、いくら営業をしても提示できる実績は増えません。その結果、長い間仕事を続けても受注する仕事の質や単価は上がらないのです。
営業と仕事のポジティブなサイクルを中長期的に回していくことが成功の鍵となります。
「スキルの輪」を広げよう
営業をする際は自分のコアスキルと関連スキルを洗い出しておくことをおすすめします。コアスキルは自分の仕事の領域の核となるスキルです。私の場合はライターなので、ライティングスキルや企画・構成などの経験がコアスキルとなります。
一方、自分のコアスキルに関連するスキルも洗い出しておきましょう。例えば、ライターの場合は編集やマーケティング、デザイン、ディレクションなどのスキルが関連スキルに該当します。
スキルを増やすためには、図のようにコアスキルから関連スキルへと同心円状に経験を広げていきましょう。関連スキルを身に着けることで自分の仕事の幅が広がり、営業の際にもクライアントの様々な要望に応えられるようになります。
「器用貧乏」の時代はもう終わり?目指すのは職人ではなく「丁度良い人」
「器用貧乏」という言葉があるように、一昔前までは多くの領域に手を出すのではなく、一つの道を究める言わば「職人」のような人が重宝されていました。
しかし、市場の移り変わりが激しくなり、消費者やクライアントのニーズが多様化した現代社会においては、一つコアスキルだけで市場を渡り歩くことは困難になっています。
多くのスキルを身に着けておくメリットは、第一にリスクを分散できることにあります。時代とともに人々のニーズが移り変わっても、複数の領域をまたがって仕事ができれば「喰いっぱぐれ」を回避できます。
第二のメリットは、コアスキルに関連したスキルを身に着けておくことで、営業時により良いポジションを獲得できることです。
例えば、私が編集の商談をする際、クライアントから「実はマーケティングにも困っていて…」などと相談を受けることがあります。この際、マーケティング知識を持っていれば、クライアントにマーケティングの仕事を含めた見積もりを提案することもできるのです。
クライアントがその時々の悩みを打ち明ける際、必要としている人材は職人ではなく関連する業務を幅広くこなせる「丁度良い人」です。実務の中で浮き彫りになった細かな課題を解決するためには、領域横断的に仕事ができる人材が必要とされているのです。
こうした意味で、クライアントワークの領域において「器用貧乏」は過去の話となっていると言えるでしょう。
フリーランスが身に着けたい営業の習慣とは?
フリーランスとして日々営業をする際には、いくつか身に着けたい営業の習慣があります。ここでは、営業先の選定や単価交渉時に身に着けておきたい習慣をご紹介します。
脱クラウドソーシングという生存戦略
フリーランスとして思うように案件を獲得できない方は、クラウドソーシングに依存している傾向が見られます。クラウドソーシング自体は決して悪いものではありませんが、利用しやすさゆえに多くの利用者が案件に提案を行っており、競争率は高くなりがちです。
また、案件への応募が多くなるほど単価は低くなる傾向にあるため、「案件を獲得できない、できても低単価」という状況に陥ってしまいます。
特にライターの場合、誰でもできる仕事を低単価で発注している案件が多く見られます。クラウドソーシングで売上が伸び悩んでいる方は、一度情報源を見直してみると良いでしょう。
例えば、グーグルアラートで探している案件のキーワードを登録しておきましょう。通知が届くように設定しておけば、毎朝インターネット上にアップされる案件をすぐに見つけることができるようになります。
アラート設定のコツは、自分の興味のある分野のキーワードを複数設定しておくことです。こうすることで、幅広い募集案件の情報を集めることができます。
例えば、私の場合「ライター募集」以外にも「編集者募集」、「ディレクター募集」、「新メディア」などを登録しています。これらのキーワードを登録することで、関連する分野の募集案件もチェックできます。
グーグルアラートの通知自体はキーワードに関連性が低い情報もあり、玉石混交です。毎朝数分間、関連する情報だけをさっとチェックする習慣をつけると良いでしょう。
まとめて営業する日を決める
目の前のやるべきタスクが積み重なると、営業に割く時間が少なくなってしまいます。多忙な中でも定期的に営業をするには、週の中でまとめて営業メールや資料を送付する日を決めておくと良いでしょう。
また、定期的にポートフォリオの情報を更新することも大切です。営業に欠かせない参考資料を充実させることも、営業を効率的に行う際に必要なポイントです。
小さな隙間を埋める役割を探す
上述した通り、フリーランスはコアスキルから出発し、関連するスキルを広げていくことが重要です。クライアントの要望にはあまり好き嫌いをせず、積極的に新たな仕事にチャレンジしていきましょう。
例えば、私はクライアントからよく次のようなことを相談されます。
「弊社ではライターさんを募集しているのですが、応募してくる方はみなライター業に専念したいという方ばかりなんですよね。弊社としてはマーケやディレクションまでできる方だと有難いのですが…」
このように、会社側とフリーランス側で仕事観にミスマッチが生じることがよくあります。ここで重要なポイントは、多くの会社は一つの仕事に専念する職人を求めているわけではなく、コアスキルを中心に周辺の手つかずな仕事の隙間を埋めてくれる人材を欲しているということです。
「自分はこの仕事に専念したい」という態度は、会社側の課題に寄り添うものではありません。様々な領域のスキルを身に着けておけば、思わぬかたちで次の仕事に繋がるものです。不要なアイデンティティを捨て、フットワークの軽い人材として活躍しましょう。
「丁度良い人」の単価は上がりやすい
上記のような仕事の隙間を埋めてくれる「丁度良い人」は、会社にとって「都合の良い人」というわけではありません。フリーランスとして仕事をする以上、適切な単価交渉が必要です。
私の経験上、仕事の調整や企画にまで参画するフリーランスは単価交渉で成功しやすいように感じています。細かな仕事の調整や企画をこなすとクライアントの労力は削減され、クライアントはあなたのことを替えの効かない人材だと認識してくれるようになります。これにより、クライアントは単価交渉に応じてくれやすくなるのです。
クライアントと長期的な関係を築くためには、営業時にクライアントの細かな要望に応じる姿勢を見せることが大切です。