”未完成”を愚直に公開。「島プロ」柴田さんが語る人を巻き込む習慣化のコツ

北海道を中心に、宿泊施設の運営やプロデュース、空き家活用、関係人口創出など、多岐にわたって活動されている柴田 涼平さん。

2020年10月には「北海島(ほっかいじま)プロジェクト」と呼ばれる北海道というキーワードでつながるオンラインサロンを立ち上げており、その中のメルマガ「島マネ便り」で精力的に情報発信をされています。2021年5月時点で更新日数は250日を突破。柴田さんが発信した情報から、プロジェクトが生まれ実際に形になった例もあるそうです。本記事では、柴田さんに行動を習慣化するコツと、周りの人たちを巻き込み、活動を大きくする方法について詳しくお話を伺いました。

「島プロ」とは?

島プロ

ーーまず、簡単に柴田さんのお仕事を教えていただけますか?

河嶋峻、木村高志とともに合同会社Staylinkを立ち上げて、現在は宿泊施設の運営やプロデュース、空き家活用、関係人口創出、移住促進、コミュニティ組成・運営といった事業をしています。その事業の一環で北海道というキーワードでつながるオンラインサロン「北海道プロジェクト(以下、島プロ)」を3社共同で2020年10月1日に立ち上げました。

現在、島民と呼ばれる会員が210名ほど在籍しています。立ち上げ5日目から「島マネ便り」として毎日情報を発信しています。2021年5月時点で更新日数が250日を突破しました。情報発信を続けるうちに少しずつ反応をいただけるようになって、現在では会員の方が企画しているカメラ講座やライティング講座など無料で楽しめるコンテンツが月に6〜8回、また今月からは「島ヨガ」と呼ばれるオンラインヨガが始まったり、プレゼントキャンペーンやワーケーション企画など、情報発信とイベント、プロジェクトが複数動いています。

ーー毎日情報を発信しようと思った経緯は?

月額課金で行われているプロジェクトやオンラインサロンってたくさんあるじゃないですか。そのなかで島プロはどんな価値提供をできるかと考えたときに「毎日動いている」と安心感があるしワクワクできるなと思ったんですね。

過去にいくつかコミュニティやオンラインサロンに入ったことがありますが、形骸化しているものをたくさん見てきたんですね。とりあえずコミュニティ作ったけど、発信が月に1回や2週間に1回だと個人的には誠実じゃないなぁと感じたんですよね。

だから、このコミュニティでは毎日情報を届けてちゃんと動いているというのを伝えることを自分に課しています。

ーーネタ探しはどうされているんですか?

僕自身、いろいろな場所に赴く機会や人と会うことが多いので、基本的にはそこで得た情報を発信します。地域が取り組んでいること、その人が思いをもって動かしている事業の話などをシェアすることが多いですね。

ーー会員の方も積極的に参加されているように感じますが、それはやはり毎日行っている情報発信が功を奏したのでしょうか?

そうですね。島プロはFacebookページで運用していますが、だいたい投稿1つに対していいね数が30、既読も150以上つくので反応率は高いのかなと思います。

今年の5月13日に、島マネ便りで緊急事態宣言下に何か飲食店のためにできることはないかと投稿したんですよね。それに対して「Webサイト作れるので協力しますよ」とコメントをくださって。そこから徐々にライティングができる人、ロゴが作れる人、動画が作成できる人、飲食店事業者とつながりが多い人などが集まって、22日に多くの人に酒屋の情報を知ってもらうWebサイト「酒屋物語」をリリースしました。

酒屋物語のホームページ

この動きはすごくコミュニティっぽいというか、毎日情報発信をしていたことでひとつ形になった実例かなと思いますね。最近は、島プロを一緒に盛り上げてくれているコアメンバーも増えてきて、自走したコミュニティになってきています。

サッカーから学んだ習慣の大切さ

サッカーチーム

ーーここからは、柴田さんの過去についてお聞きできればと思います。小さい頃はサボりがちな子供でしたか?

いえ、小さい頃もけっこう真面目だったと思います。人の顔色をうかがって生きているタイプでした。授業サボったことないんですよね(笑)

ーーそれは怒られたくないとか、ちゃんとやらなきゃみたいな感じですか?

なんでだろうな……親や先生など他の人に迷惑をかけたくなかったんですよね。自分が真面目に授業を受けないことで、誰かを妨げることが嫌だったんだと思います。人に迷惑かけたくない意識はずっとありましたね。

ーーサボらずに期限内にやり遂げるタイプだったんですか?

そうですね。当時サッカー選手を目指していたので、やり切る姿勢はサッカーで身についたのかもしれません。

赤点だと補習を受けないといけなくて、それで部活に遅れるのが嫌で学校の成績は良かったですね。サッカーの足を引っ張る要素はすべて排除していました。

ーー日々の練習から、習慣の大切さを学んだんですね。

小学校、中学校の頃はそこまで習慣について考えていませんでしたが、高校のサッカー部の監督と仲間たちとの出会いで変わりましたね。当時のサッカー部は「サッカーを通じて社会に貢献できる人材を育成する」ことを大切にしていたんですね。部活の最初の15分で、習慣の話やモチベーションについて外部講師から話を聞くこともありました。

サッカーって「ボールがこう来たら、次はどうしようか」みたいに意思決定の連続じゃないですか。そのときにベストな意思決定ができるように、他の意思決定をできるだけ減らしていました(笑)なので、ウォーミングアップの15分間は、頭を使わなくても良いように自分をロボット化させてましたね。

毎日プレーの振り返りや反省をサッカーノートに書いたりして、気付いたらサッカーが習慣を作ってくれていたんだなと思いますね。

あと『3週間続ければ一生が変わる』という習慣の本があって、それを19歳に読んだときに、自分が今までやってきたことと習慣の大切さがリンクして「そうか、こういうことだったんだ!」と腑に落ちましたね。

ーー僕だったら、面倒くさくて基礎練習を手抜きしそうです……(笑)。そうなったことはありませんでしたか?

毎日15分くらい同じ基礎練習やウォーミングアップをするのがサッカーをする前の儀式になっていたので手を抜かなかったですね。むしろそれをしないと気持ち悪いくらいで。

ーー疲れて気乗りしないときはどうしていたんですか?

サッカーに対する熱量が尋常じゃなかったので、気乗りしないことがなかったんですよね。むしろ「朝が来た!うれしい!!」みたいな(笑)そのときに好きという気持ちは大事だなと思いました。好きという要素がないと習慣化するのはキツイよなぁと、会社を経営していてより一層強く思いますね。

習慣化するなら「ゴール」と「公開」を

ゴールを目指している男性

ーー習慣化で大事にしているポイントはありますか?

まず1つ目がゴールを決めることですね。ただやるだけだと、ゴールのないマラソンをしているみたいで辛いと思うんですよ。「人間が習慣を作り、後に習慣が人間を形成していく」という言葉が好きで。1つ区切りの日があると、とりあえずがんばれるじゃないですか。

2つ目が公開ですね。アファーメーション(宣言)ってすごく大事だと思っていて。僕の場合だと、「毎日発信します」と宣言すれば、会員の210人全員にチェックされているような状態になるわけで(笑)

ーー習慣化できない人は、目標を高く掲げすぎる傾向にあるのかなと思っています。目標設定のコツはありますか?

「島プロ便り」に関しては、文字数の制限は特に決めていなくて、600〜3000文字と気分次第で変わりますが、毎日発信するノルマは課しています。質をこだわっていないわけではないですが、質を高いものだけアップしようとすると大変ですよね。だから、毎日の発信を大事にして、量をこなして質を上げるようにしています。なので目標設定はあまり重すぎない方が良いですね。

ーー習慣化するために活用しているアプリやツールはありますか?

一周回ってGoogleカレンダーになりました(笑)Asana(アサナ)やTrello(トレロ)を使っていましたが、途中からそのツールを起動するのが面倒くさくなっちゃって。他にもMacのリマインダー機能などいろいろ試しましたが、なかなかハマらなかったですね。

最終的に、Googleカレンダーにモーニングルーティンから英語の勉強、移動時間、タスク管理、入浴、就寝時間など、すべての予定を入れています。なので、今はGoogleカレンダーを毎日起動して予定にしたがって行動するみたいな感じなので、とてもラクですね。

さきほど、適切な意思決定ができるように、あまり無駄に頭を使わないという話をしていましたが、まさに習慣化はそれを手助けする役割でもありますよね。

公開することと、応援されることは表裏一体

wayaオープニングパーティーの様子

ーーありがとうございます。さきほど習慣化には「公開する」ことが効果的とお話ししていましたが、「批判されたら嫌だな」「成長段階を見せるのはみっともなくて恥ずかしい」と思う人もいそうですが、それを変えるコツはありますか?

「アーミー・オブ・ザ・デッド」というゾンビ映画をご存知ですか?その映画では制作の裏話も出していて、そっちもすごい人気なんですよね。

やっぱり裏話や過程って、見てる側からすると圧倒的に楽しいコンテンツの1つだと思っています。弾き語りもバシッと格好良く演奏しているのも素敵なんですけど、何もできないところからその人の動きを追って、半年後にがんばって練習した成果が100%発揮されている姿を見たほうが、より感動は大きいと思うんですよね。

恥ずかしい、誰のためになるかわからない気持ちもわかりますが、意外とそこを求めていたり楽しんでくれたりする人もいると思えると、少し気がラクになるかなと思いますね(笑)

それでも公開・公表が恥ずかしければ、「これ習慣化するために自分を追い込もうと思うから、3週間毎日連絡していい?」と一人の友人に連絡するのでも良いと思いますよ。

ーー公開することと、応援されることは表裏一体なんですね。

そうですね。最初のゲストハウス「waya」をオープンするときも、本当にいろいろな人に手伝ってもらいました。定期的に情報発信をしていたのですが、その情報を見て壁塗りや壁を解体するのを手伝ってもらって、応援してくれることにもつながります。発信していて思うのは、完璧な情報でなくても良いってことなんですね。あえて、余白を見せることで肯定的な意見だけでなく批判的な意見など自分にない視点を得ることもできますし。

ーーただ一方で、「余白」と「不誠実」の境界線はなかなか難しいと思いますが、そのあたりはどのように気をつけていますか?

余白があることと不誠実は全く違うものだと思っています。結局「これぐらいで良いだろう」というのは、関わってもらっている人たちへの誠実さや感謝が足りないわけで、人の善意に寄りかかっているだけなんですよね。感謝、素直さ、誠実さをもつことで、それは解消できるのかなと思います。

ーー最後に、今後の展望について教えてください。

直近の目標は、島プロで動いているプロジェクトを形にすることですね。規模も今の200名前後から700名くらいまで拡大できたら良いですね。

僕個人としては「あらゆる境界を融かす」という想いを大事にしています。高校では日本と戦争の関係を持った国に行く研修旅行がありました。僕は韓国コースで60人くらいの生徒のリーダーをすることになったんですね。第二次世界大戦中に従軍慰安婦だった韓国人女性が運営している「ナヌムの家」というシェアハウスがあって、そこに行って挨拶する役割をもらったのですが、何か言われたらどうしようと緊張していたんですね。

そしたら温かいハグで迎えてくれて、泣きながら当時の様子を語ってくれたときに「無知は罪」だと思ったんですよね。

世の中にある悲しい出来事を減らすにはどうしたら良いか考えたときに、まずは 「小指ぐらいが接する接点作りをしていこう」 と思いました。その接点が作れればお互いを理解できるきっかけになりますよね。理解できれば想像力も増して、想像力が増せば受容力を高くなって、最終的にやさしくなれるな、と。この「あらゆる境界を融かす」という思いを胸に、これからも活動していきたいです。

まもなく、Staylinkは8期目を迎えます。本当に今までは自分たちのやりたいことをたくさんの方々に叶えていただきました。

会社経営に関しては3人ともポンコツでしたが(笑)、周りの方々に支えられて札幌に3店舗、小樽に2店舗の宿泊施設、札幌で1店舗のシェアハウスを運営できるまでに成長できました。

これからは、恩返しというよりは恩送りという形で、誰かの「やりたい」という声や情熱を無駄にせず、叶えていける、支えていけるような会社にしていけたら良いなと思います。

合同会社Staylink

〜境界を融かし、北海道と世界をつなぐ〜北海道プロジェクト